こんにちは、まちエネです。
EV(電気自動車)は、環境に優しくてガソリン代も節約できるため、ますます人気が高まっています。排気ガスが出ないことや、運転の快適さから、多くの人がEVを選ぶようになっていますが、火災のリスクについて不安を持っている人も少なくありません。
ニュースやSNSで、EVが走行中でも充電中でもないのに発火し、火事になってしまったという記事を読んだことのある方もいらっしゃるかもしれません。
多くのEVに搭載されているリチウムイオン電池は、強い衝撃が加わると発熱や発火する可能性があるため、「EVは燃えやすい」という誤解を持つ人もいるようです。
そこで、EV火災が実際にどれくらい多いのかについて、リチウムイオン電池の特性を交えて解説し、万が一火災が発生した場合にどのように対処すればいいのか、わかりやすく説明していきます。
EV(電気自動車)の火災リスクは低い
まず、知っておいてほしいのは、EVの火災リスクは非常に低いということです。実際、ガソリン車に比べて火災の発生率はかなり低いといわれています。
アメリカの保険見積もり比較サービスAutoinsuranceEZ.comは、車両保険についての調査をおこない、車の種類ごとの火災の発生件数、100,000台当たりの火災発生数を発表しています。その報告では、EVは火災の件数も発生数もかなり低いことが明らかにされています。
火災発生件数 | 10万台当たりの火災発生数 | |
ハイブリッド車 | 16,051 | 3,474.5 |
ガソリン車 | 199,533 | 1,529.9 |
EV | 52 | 25.1 |
この結果を見ると、ニュースやSNSでいわれているような「EVは燃えやすい」という認識は誤解であることが分かります。
車両火災の原因で最も多いのは排気管
国内では消防庁から車両火災に関する統計が報告されています。令和5年度第3回消防用設備等の設置・維持のあり方に関する検討部会では車両火災の発生原因のうち最も多いのは排気管となっていました(15.1%)。
EVには排気管がないため、やはり車両火災のリスクとしては低いものと考えられます。
参考:令和5年度第3回消防用設備等の設置・維持のあり方に関する検討部会 車両火災の現況等について 令和5年11月20日 消防庁予防課
EV火災リスクが低い理由
EVの火災リスクが低い理由の一つは、ガソリンを使わないので、燃料漏れやそれにともなう火災のリスクがないことです。
また、EVやPHEVに搭載されているリチウムイオン電池は、火災が起こりにくいように設計されています。バッテリーパックは衝撃や過熱に強く、万が一トラブルが発生しても、火災が広がらないように工夫されています。さらに、多くのEVメーカーは、バッテリーの過充電や異常を検知するシステムを搭載し、安全性を高めています。
ただし、バッテリー自体が原因の火災は完全にゼロではありません。強い衝撃や充電時のトラブルなど、非常に稀なケースで発火する可能性もありますが、それはごく限られた状況でのことです。
EVに搭載されているリチウムイオンとは?
EVの走行用バッテリーは、1990年代までは主に鉛バッテリーが採用されていました。現在でも一部の小型車では鉛バッテリーが使われていますが、ほとんどのEVはリチウムイオン電池を採用しています。
また、次世代のバッテリーとして注目されているニッケル水素バッテリーは、これまで主にHEV(ハイブリッド車)で使われており、現在も同様に採用されています。
2000年頃からはリチウムイオン電池がEVやHEVに採用され始め、そのコンパクトさと大出力の利点から、2010年代以降は各種電動車(MH EV、HEV、PHEV、BEV)に広く使われるようになり、現在では走行用バッテリーの標準となっています。
今後、2030年代には次世代の全固体電池がリチウムイオンに取って代わると期待されています。
リチウムイオン電池の発火リスク
リチウムイオン電池はEVだけでなく、スマートフォンや家電製品など多くの製品にも使われています。
特に小型機器では、廃棄時の衝撃でバッテリーが破損してショートし、「熱暴走」を引き起こすリスクが知られています。EVでも、製造不良や事故による衝撃でバッテリーパックや配線が破損すると、同様に発熱・発火の危険性があります。
ただし、このリスクはEVに限らず、PHEVやHEV、さらにはエンジン車にも共通しています。
発火しにくいが、鎮火しづらい
ここで重要なのは、万が一火災が発生した場合、消火・鎮火が非常に難しいという点です。
リチウムイオン電池は、一度火がつくと非常に高温で燃え続けるという特徴があります。さらに、燃えたバッテリーが冷えても、再び火がつくことがある「再燃」のリスクが高いのも難しいところです。
EV火災では、大量の水を使って冷やすことが必要になります。特にEVのバッテリーは床下に配置されていることが多いため、放水が届きにくく、ガソリン車の火災は比較的短時間で消火できるのに対して、EVやPHEVの火災は完全に鎮火するまで何時間もかかることがあります。
鎮火まで非常に時間がかかることも、長時間の火災と消火作業によりニュースになりやすい要因かもしれません。
火災を防ぐためのポイント
EVやPHEVの火災リスクは低いですが、いくつかの対策でさらに安全に使用できます。
- 適切な車内環境の維持
高温多湿や極寒の環境は避け、車内環境を適切に保つことも火災防止につながります。 - 充電時の注意
正規の充電器を使い、取扱説明書に従って正しい方法で充電しましょう。過充電を避け、充電完了後は速やかにケーブルを外すことが大切です。 - バッテリーの点検
定期的なバッテリーのチェックを行い、異常や劣化があれば早めに対応することでリスクを減らせます。 - 事故後の点検
もしも事故にあってしまった場合、事故後はバッテリーのダメージ確認を整備士に依頼し、発火のリスクに備えましょう。
万が一EV火災が発生した場合の対処方法
リチウムイオン電池の火災は非常に危険で、EVに限らず電池を搭載した車全般で発生する可能性があります。火災が発生した場合、以下の対応が重要です。
まず、火が広がるスピードが非常に速いため、すぐに車から降りて安全な距離まで離れることを最優先しましょう。その後、119番通報し、リチウムイオン電池を搭載している車両であることを消防に伝えます。また、火災の状況や車両の位置、他の情報も可能な限り詳細に伝えることが重要です。
リチウムイオン電池が熱暴走を起こした場合、火災は簡単にはおさまりません。EVの場合、燃料がないためエンジン車よりは爆発のリスクが低いですが、まずは自分と周囲の安全を確保し、正確な情報を消防に伝えることが必要です。
消火の際には大量の水を使用して電池の温度を下げることが効果的です。泡消火器では火を消すことが難しいため、水を使って徹底的に冷却する必要があります。火が一度鎮火したように見えても、温度が十分に下がっていないと再び燃え出す危険があるため、しっかりと冷やすことが重要です。
なお、「リチウムは水と反応して発火する」という話がありますが、EVに使われているリチウムは通常イオン状態であり、大気に触れないように密封されています。そのため、消火時に水をかけても問題はありません。
EVやPHEVの火災リスクは非常に低く、安心して使える車です。しかし、万が一の火災が発生した場合、消火が難しいという特有の課題があることも知っておく必要があります。適切な充電方法や定期的な点検、事故後の対応など、日常の使い方に少し注意を払うことで、リスクをさらに低減することができます。
これからも進化し続けるEVの技術と、安全に使うための正しい知識を持って、EVやPHEVの快適な生活を楽しんでいきましょう。