こんにちは、まちエネです。
EV(電気自動車)をお持ちの方の中には、V2Hという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
日本が抱えるエネルギー問題や、台風や自然災害による停電対策において、V2Hが役立つことを知っている方、すでにご自宅に導入されている方もいらっしゃるかもしれません。
V2Hは非常時にはEVのバッテリーを家庭用の電源として活用し、停電時や災害時に安定した電力供給を確保する手段として注目されています。また、電気料金の負担を軽減するためにも、V2Hの活用が有効であると考えられています。
EVを持っているけれど、V2Hについてはどういう仕組みなのかあまり理解できていない、導入するメリットはどんなものなのか、そんな疑問をお持ちの方に向け、EVの新しい可能性として注目が高まっているV2Hについて解説します。
V2Hとは?

V2H(Vehicle to Home)とは、EVから家庭へ電力を供給するシステムの略称です。EVやPHEVのバッテリーに蓄えた電力を家庭で利用できるようにする装置を指します。
通常、EVの充電設備は家庭からEVへの電力供給に特化していますが、V2Hはその逆で、EVの電力を家庭に供給することができます。
近年のEVはバッテリー容量が大幅に増加し、航続距離も向上しています。V2Hを導入することで、EVの電力を効率よく活用し、家庭用蓄電池として機能させることができます。
自宅の電流を変換してそのままEVに充電できる
またV2Hは自宅経由でのEV充電も可能にしてくれます。
実は、家庭内の電気は交流電力で供給されており、その一方でEVのバッテリーは直流電力で充電されています。そのため、家庭の電気をEVへ充電したい場合には交流から直流への変換が必要となりますが、この変換は交流・直流変換機器がなければ行うことができません。
EV自体には交流から直流への変換機能が搭載されていますが、その分充電にかかる時間が長くなる可能性や電力の損失が生じることがあります。
V2Hを利用すると、家庭内で交流・直流の変換を行った上でEVを充電することができます。これにより、充電時間の短縮や充電効率の向上が期待できます。
さらに、V2Hでは電力会社からの電力だけでなく、太陽光発電などの自家発電電力も活用できます。V2Hには様々なメリットがある設備だといえます。
家庭用の蓄電池とは何が違う?

家庭用の蓄電池は電気を蓄えることができる一方で、V2Hはあくまで電気の種類を変換することで、EVと自宅とをつないでくれる役割となっています。V2Hシステムそのものには蓄電機能はありません。
ただし、EVを蓄電池のように使うという意味で比較すると、家庭用の蓄電池の容量とEVのバッテリー容量を比較することができます。家庭用の蓄電池の容量は、大きいものでも15kWhほどになりますが、EVは一般的に40kWhや60kWhのバッテリー容量があるため、より多くの電気を蓄えられます。
V2Hと家庭用蓄電池は役割が異なるため、どちらが優れているということはありません。しかし、家庭用蓄電池と通常のEV充電設備を個別に設置すると、それぞれの機器費用に加え、工事の手間や費用もかさみます。しかし、V2Hを選ぶことで1台の機器で済み、工事時間の短縮や導入コストの削減が可能です。
また、V2Hのなかには太陽光発電との併用が可能なモデルもあります。トライブリッド型と呼ばれるV2H、蓄電池、太陽光発電の3つが一体型になったシステムは、より効率的にお家の電気を使えるといえるでしょう。
家庭用蓄電池の仕組みや、メリット・デメリットについてはこちらのコラムで解説していますので、ご参考ください。
V2Hのメリット
V2Hシステムの導入には、次のようなメリットがあります。
- EVを災害時の非常用電源として活用する
- EVの充電スピードの向上
- 太陽光発電との組み合わせで、電気の自給自足ができる
EVを災害時の非常用電源として活用する

V2Hを導入することで、EVを災害時の非常用電源として活用できます。停電などでお家の電気が使えない場合でも、V2Hを介してEVからお家に電気を供給することで、家の中で家電製品を稼働させることもできます。
自然災害に備えるとともに、計画停電時の影響を最小限に抑えることが可能です。災害や停電の際にはV2HとEVは心強い味方になるでしょう。
災害や停電でのEV活用についてはこちらのコラムで詳しくご紹介しておりますのでご参考ください。
EVの充電スピードの向上
先にお伝えしたように、V2Hは家庭の交流電力をEV向けの直流電力に変換してくれます。そのため、V2Hを経由したEV充電は、通常の充電器よりも充電スピードが速く、短時間で充電できます。これにより、充電時間を効率的に短縮することができます。
V2Hは出力が6kWで、200Vの普通充電器(3kW)の約2倍のパワーがあるため、充電時間が大幅に短縮されます。たとえば、普通充電器だと充電完了まで16時間かかる場合、V2Hを経由すれば約8時間で完了します。
太陽光発電との組み合わせで、電気の自給自足ができる
太陽光発電と蓄電池を連携できるタイプのV2Hを導入すれば、電気代をさらに節約できます。日中に使い切れなかった太陽光発電の電力を電気自動車(EV)に充電して貯めておけるのがポイントです。
太陽光発電で作った電気をEVに貯めておき、夜になったらV2Hを使ってEVからお家に電気を供給すれば、電気の自給自足も可能です。
実際には太陽光発電でそれだけの電気を作ることは難しく、曇りや雨の日には発電ができないため、太陽光発電とV2Hだけで完全な電気の自給自足生活をすることは難しいです。しかし、このように、V2Hと太陽光発電を組み合わせることで、電気を無駄なく活用し、購入する電気を減らして電気代の節約につなげることができます。
V2Hの導入にはいくらかかる?

V2Hは導入にそれなりの費用がかかります。V2Hは購入することもできますが、月額費用を支払うリース契約のタイプもあります。
V2H機器の購入価格はおおよそ55万~140万円程度となります。販売メーカーはそれほど多くなく、ニチコンから出ているEVパワー・ステーション、デンソー、東光高岳などがあります。
機器の購入に加えて、設置工事も必要なため、工事費用が掛かることも覚えておきましょう。工事費用は30万円~40万円ほどを目安にしましょう。
しかし、設置するご自宅によっては、V2H機器と自宅をつなぐためのケーブルの長さの追加や壁面への施工が必要になるなど追加費用が発生する可能性もあります。
依頼する工事会社に見積もりを出してもらいよく吟味しましょう。
加えて注意が必要なのは、すべてのEVがV2Hに対応しているわけではないことです。ご自身のEVがV2H対応車種かどうかはあらかじめ確認しておきましょう。ちなみに、日産のリーフ、ホンダのHonda e、三菱自動車のeKクロスEVなどはV2H対応車種となっています。
補助金も利用してコストダウンしましょう
機器購入費と工事費である程度のお金がかかりますが、国や各自治体ではEVの購入やV2H機器の購入に補助金を支給しています。
例えば東京都では令和4年度に本体購入費と設置工事費を合わせ、上限50万円のV2H補助金を助成していました。
参考:クール・ネット東京 電気自動車等の普及促進事業(V2H)災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業
それぞれの購入費用を抑えることができれば負担も軽減できますので、ぜひ一般社団法人次世代自動車振興センターなどのホームページからチェックしてみましょう。
EV・PHEVの普及から注目されているV2Hについてご紹介いたしました。うまくV2Hを活用することで、EVの活躍の幅も広がり、より経済的で効率的な電気の利用が可能になります。今回の内容を参考に、EVのポテンシャルを引き出すV2Hを検討してみてはいかがでしょう。