
こんにちは、まちエネです。
夏が近づき、エアコン使用の機会が増えてくると、「クーラーの冷房より除湿の方が、電気代が安くすむのかな?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
消費電力という面だけを考えると、単純に電気代を抑えたいという場合には、消費電力が少ない弱冷房除湿(ドライ)がもっともおトクと言えます。
しかし、冷房と除湿では仕組みや目的が全く異なります。ここでは、その違いを理解し、電気代の計算方法や賢い節約方法を確認していきましょう。冷房と除湿の使い分けを気をつけることで、ひと夏の電気代を大幅に削減できる可能性があるからです。
ぜひ、この機会に違いを把握し、参考にしてみてはいかがでしょうか。
冬の暖房を含めたエアコンの電気代についてはコラム「エアコンの電気代っていくら?節約のためのスマートな使い方もご紹介」でご紹介しております。
冷房と除湿の仕組みは何が違う?
はじめに、エアコンの「冷房」と「除湿」の違いについて説明します。同じエアコンでも、スイッチひとつで切り替えられるこの2つの機能は、目的が大きく異なります。
冷房機能の役割
冷房機能は、その名の通り、室内の温度を下げることが目的です。エアコンには冷媒ガスが使われており、取り込んだ空気をこの冷媒ガスが持つ冷却力で冷やし、冷風を作り出しています。この過程で室内に存在する熱は、室外機を経由して屋外へと排出されます。冷房運転中に室外機から熱風が出ているのは、この熱を逃がしているためです。
除湿機能の役割
一方、除湿機能の役割は、部屋の湿度を下げることにあります。温度を下げるのではなく、空気中の水分を取り除き、湿った空気を乾燥させる機能です。夏場は湿度が高くなりがちで、ジメジメとした空気は不快な印象を与えます。このジメジメ感を解消し、快適な室内環境を作り出すのが、除湿機能の主な目的なのです。
このように、冷房と除湿は目的が全く異なる機能です。用途に合わせて適切に使い分ける必要があります。
エアコンの除湿機能には3種類のタイプがある

エアコンの除湿機能には、実は3種類のタイプがあることをご存知でしたか?
どの除湿タイプを採用しているかは、エアコンのメーカーや機種によって異なります。除湿のタイプによって、その機能や特徴が変わってくるのです。
弱冷房除湿(ドライ)
最も広く使われている除湿タイプが「弱冷房除湿」です。取り込んだ空気を一旦冷やして湿度を下げ、その後部屋に戻す仕組みです。
機能表示では「ドライ」と表記されていることも多々あります。確かに冷房よりは温度下降は穏やかですが、室温がある程度は下がります。真夏日など暑い日に使うと、部屋が冷え過ぎてしまう可能性があります。
再熱除湿
「再熱除湿」は、名前のとおり、空気を一旦冷やした後、再び過熱して部屋に送り返す、湿度調整のみをおこなうタイプです。
空気を一旦冷やした後、再び加熱して部屋に送り返します。このため室温はほとんど下がらず、湿度だけを効果的に下げられます。ただし、空気を冷却と加熱の2ステップで処理するため、消費電力が最も高くなる欠点があります。
ハイブリッド除湿
「ハイブリッド除湿」は上記2タイプの中間的な除湿方式です。空気を冷やした後、部屋の空気と混ぜ合わせることで温度の低下を抑えつつ、湿度のみを下げます。弱冷房除湿よりは温度下降が穏やかですが、再熱除湿ほどの消費電力も必要ありません。
このように除湿機能には3通りのタイプがあり、それぞれ長所短所があります。エアコンの取扱説明書で自分の機種の除湿タイプを確認し、用途に合わせて適切に使い分けることで、より快適な夏を過ごせるはずです。
最後に、快適性とのバランスを考えてみましょう。湿度設定が可能なエアコンでは、室温28℃でも湿度50%前後に保てば快適に過ごせます。
湿度が50%を超えそうならば除湿を、さらに高温で除湿が追いつかない場合は冷房を使うことをおすすめします。状況に合わせて機能を使い分ければ、電気代の節約と快適性の両立が可能となります。
エアコンの除湿タイプの見分け方は?
各除湿方式の見分け方については、各メーカーのホームページや取扱説明書を確認いただくことが確実です。エアコンのリモコンに「除湿」とだけ記載されている場合には、「弱冷房除湿(ドライ)」となり、そのほかの記載(例えば「カラッと除湿」、「さらら除湿」などの記載があれば、それは「再燃除湿」タイプと考えられます。
冷房と除湿の比較、結局どちらが良い?
除湿にはいくつかの種類があることが分かりましたが、それでは冷房とそのいくつかの除湿では結局のところどれが一番おトクなの?と思う方も多いでしょう。あくまでそれぞれのモードの消費電力で比較してみますと、以下のようになります。
運転モード | 消費電力 |
---|---|
冷房 | 再熱除湿より少ない |
弱冷房除湿(ドライ) | 少ない |
再熱除湿 | 冷房より多い |
ハイブリッド | 冷房より少ない |
それぞれ目的が異なる運転モードですが、電気を使わない順つまり電気代が安い傾向にある順番としては
- 弱冷房除湿(ドライ)
- ハイブリッド
- 冷房
- 再熱除湿
となっています。単純に電気代を抑えたいという場合には、消費電力が少ない弱冷房除湿(ドライ)がもっともおトクと言えます。
ただし、実際の室温や湿度が快適に過ごせるものになるのかはまた別のお話です。お部屋が快適にならないのであれば、そこにかかる電気代は高いといえますから、ご自身のエアコンを使う環境に合わせて選ぶことが一番です。
各モードの電気代は?

ここからは実際に冷房や各除湿の電気代を確認していきましょう。電気代を計算するには、次の式を使用します。
電気代(1時間あたり) = エアコンの消費電力(kW) × 電力会社の電気料金単価(円/kWh)
冷房の電気代
まず冷房時の電気代から見ていきましょう。冷房は、エアコンの圧縮機で冷媒ガスを圧縮・液化させ、その際に発生する熱を室外に放出することで室内の温度を下げる仕組みです。このように、冷房は機械的に熱を室外に逃がすため、大量の電力を消費します。
一般的なルームエアコンの消費電力は、冷房運転時で400W~800W程度が目安値です。消費電力にもよりますが、例えば600Wのエアコンを1日8時間運転すると、
600W×8時間=4.8kWh
の電力を消費することになります。電気料金が27円/kWhとすると、1日の冷房代は約130円になります。夏場は毎日冷房を使うため、月額で3,000円以上とかなりのコストになりがちです。
除湿の電気代
次に除湿時の電気代を見てみましょう。除湿は冷房と異なり、室内の温度を下げるのではなく湿度を下げることが目的です。
エアコンの除湿運転は、室内の空気を冷やすことで水蒸気を液化させ、その凝縮水を外部に排出することで湿度を下げます。その後、温風で空気を再加熱して循環させます。このため、除湿運転では圧縮機の負荷が低く抑えられます。
実際の消費電力は、エアコンのメーカーや能力によっても変わりますが、おおよそ150W~300W程度が目安値です。例えば250Wの除湿能力のあるエアコンで1日8時間運転した場合、
250W×8時間=2kWh
の電力消費になります。電気料金27円/kWhとすると、1日の除湿代は約54円と試算できます。月額でも1,500円前後と、冷房時の半分以下に抑えられます。
つまり、冷房と除湿を比べると、電気代を気にする場合はエアコンの除湿運転を使う方が電力消費を大幅に抑えられるということがわかります。
どのモードが一番電気代が安くなるとは言い切れない

エアコンの電気代が高くなるかどうかは、冷房や除湿などの運転モードによって一概に断言することはできません。電気代は以下の要因により大きく変動します。
- エアコンを使用する部屋の環境(面積、日当たり、断熱性能など)
- 設定温度や設定湿度の水準
- 外気温や湿度など、外的条件
つまり、同じ冷房運転でも、室温が設定温度から大きくかけ離れていれば、エアコンはより多くの電力を消費し、電気代が高くなる傾向にあります。
逆に、適切な温度設定を心がけ、室温と設定温度の差を小さく保てば、運転モードに関わらず電気代を抑えられます。
したがって、エアコンの電気代を検討する上では、運転モードよりも「室温と設定温度の差」に着目し、できるだけ小さな差で運転することが重要なポイントだと言えます。
組み合わせて使うのがコツ

湿度が高すぎると体に不快感があるものの、温度が上がり過ぎると熱中症のリスクもあります。そのため、実際のエアコン運転では、状況に合わせて冷房と除湿を組み合わせて使うのがベストな使い方と言えます。
例えば極端に湿度が高い日は、一旦冷房で室温を下げてから除湿運転に切り替えるのがおすすめです。逆に乾燥している日は、冷房温度を高めに設定して除湿は控えめにするなど、環境に合わせて使い分ける必要があります。
夏場のエアコン使用で、冷房と除湿機能をいつどのように使い分ければよいか迷うことがあります。ここでは、様々な室内環境に合わせて冷房か除湿かを適切に選ぶポイントを解説します。
室温が高い場合は「冷房」
真夏日などで室温が高く「この暑さはしのげない!」と感じたら、迷わず冷房を使いましょう。冷房は一気に室温を下げられるため、すぐに快適な環境を作り出せます。また、気温が高ければ湿度も不快なほど高くなっているはずです。そういう時は節電よりも快適性を優先し、冷房で室温を下げることが賢明です。
湿度が高くムシムシしている場合は「除湿」
梅雨時や雨の日など湿度が高く、ムシムシとした空気が気になる場合は除湿機能を活用しましょう。湿度を50%程度まで下げれば、十分快適に過ごせるはずです。除湿運転中は室内で洗濯物を干しても、乾燥が早まる効果も期待できます。
肌寒いけど湿度が高い場合は「再熱除湿」
再熱除湿タイプのエアコンは、室温を下げずに湿度だけを下げられます。肌寒く湿度が高い日は、このタイプの除湿機能を使えば快適性が高まります。
やや暑く湿度も高い場合は「弱冷房除湿」
弱冷房除湿タイプは、冷房と除湿の両方の効果が得られます。少し暑く、湿度も高めの環境には最適な運転モードと言えるでしょう。
ワンルームで洗濯物を部屋干しする場合は「除湿」を活用
ワンルームで洗濯物を室内に干す際は、除湿機能と扇風機の併用がおすすめです。除湿で湿気を取り除き、扇風機で風を送れば、より早く洗濯物が乾きます。生乾きの嫌なニオイも抑えられます。
冷え性で室温を下げたくない場合は「再熱除湿」か「弱冷房除湿」
体を冷やしたくない冷え性の方は、再熱除湿か弱冷房除湿を選びましょう。特に再熱除湿なら全く室温は下がらないので、睡眠時の運転にも適しています。就寝前は冷房、就寝中は除湿と切り替えるのも一つの方法です。
このように、室内環境に合わせて冷房と除湿を上手に使い分ければ、快適性を保ちながら節電にも貢献できます。ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
他にも電気代を抑える方法が
冷房と除湿をうまく使い分けるコツを押さえることで、夏場の電気代を節約できますが、それ以外にも電気代を抑える方法があります。
例えば、エアコンそのものを省エネモデルに買い替えることも手段の一つでしょう。経済産業省資源エネルギー庁のデータによれば、2009年と2019年のエアコンを比較すると、10年前のモデルと比べて約17%省エネ効果が上がっているとされています。
消費電力が低くなれば、今まで通りの使い方をしても電気代は低くできるかもしれません。
参考:家庭向け省エネ関連情報 機器の買換で省エネ節約 経済産業省資源エネルギー庁
また、電力会社の変更も電気代を抑えることのできる可能性があります。各電力会社にはそれぞれのライフスタイルに合うような様々なプランが用意されています。特定の時間帯の電気料金単価が安いプランなどは、ライフスタイルによってはエアコンにかかる電気代を安くできるでしょう。
まちエネでもお昼時間帯の料金単価が安く設定されている「デイタイムバリュープラン」をご用意しておりますので、料金プランの一覧からご自身にあったプランを探してみましょう。
電気代を最小限に抑えるなら、無理のない範囲で除湿運転を中心に利用し、高温時のみ一時的に冷房を使うのが賢明でしょう。夏場のエアコン電気代を大幅に下げられるはずです。
今回のコラムを参考に、夏を快適に過ごしながら電気代も抑えていきましょう。